自分の歯を残すために今からできること

自分の歯を残すために今からできること
歯に特に問題をかかえていない時には、歯についてその重要性について考えることはないかもしれません。また、若い時には、「歯は全部そろっていて当たり前」、と思いがちです。

たいていの場合、歯のありがたさを認識するのは、歯を失い始めてからです。
歯を失い始める人が増えてくるのは、大体40~50代くらいが多いですが、1本歯を失うと、それから次々に失いやすく、歳をとってから多くの歯を失うことにもなりかねません。

歯を失うと、ものが食べにくくなるだけでなく、健康状態にも影響が及び、ひいては健康寿命を左右することにもつながります。

そこで、今回は、自分の歯を残すためにできることについて、

・自分の歯をできるだけ多く残すことの重要性
・自分の歯を失う原因
・自分の歯を残すためにできること
・予防歯科のすすめ

といった流れで見ていきたいと思います。

 

1.自分の歯をできるだけ多く残すことの重要性

 

自分の歯をできるだけ多く残すことには次のようなメリットがあります。

 

1-1しっかり噛むことができる

歯を失ってそのままにしていると、噛む力は大幅に衰えます
ブリッジや入れ歯、インプラントなどといった人工歯を入れる治療は可能ですが、やはり健康な天然歯の噛む力、噛み心地にはかないません。

しっかり噛めることで消化吸収を良い状態で保ち、口周囲の筋力もしっかりした状態で保てるので、体幹も整い、体の衰えが起こりにくくなります。

また、噛んだ刺激が脳によく伝わるので、将来的に認知症にかかるリスクも低くすることができます。

 

1-2 歯の問題に悩まされることが少なくなる

歯は一本でも失うと、バランスが崩れ、他の歯に負担がかかり始めて次々に周囲の歯に問題が起こりやすくなります。

歯を失わないようにすることで、このような負のスパイラルに陥ることを回避でき、歯のトラブルに悩まされない平穏な毎日を過ごしやすくなります。

 

1-3歯並びや顔の形が保たれやすい

歯を1本でも失い、そのままの状態にしていると、歯並びやかみ合わせがそこからどんどん崩れ始める、ということが起こりやすくなります。

そして、歯を失った部分を避けて噛むようになり、片方ばかりで噛むなど、筋肉の使い方にも偏りがでてしまうため、顔の歪みが出てくることもあります。

 

1-4年をとっても若々しさを保てる

歯を失うと、歯を失った部分の骨はだんだんと痩せてしまうため、口元にハリがなくなり、頬がこけ、顔のしわも増えて老けて見えるようになります。

自分の歯が多く残っているほど、このようなことが起こりにくくなるため、自然な若々しさを長く保ちやすくなります。

また、歯を失うと発音時に空気が抜けて「歯の抜けた老人のような発音」になりがちですが、自分の歯を保つことでそのようなことも防げます。

 

1-5医療費や時間の負担を抑えられる

歯を失うと、人工歯を補う治療法(ブリッジ、入れ歯、インプラント)が必要になり、そのたびに治療費や治療に費やす時間の負担が多くなります。

また、歯を失うことで二次的に起こりうる体の不調や衰弱の治療にかかる費用や時間というものもかかってきます。

歯をなるべく多く保つことで、このような医療費や時間の負担を抑えられます

 

2.自分の歯を失う原因

2.自分の歯を失う原因

歯を失う場合、次のようなことが原因となります。

 

2-1歯周病

歯周病とは、歯を支えている歯茎や骨などの組織が歯周病菌の感染によって侵され、破壊されてしまう進行性の病気で、最終的には歯を支えられなくなって歯が抜け落ちてしまいます

歯周病は日本においては成人の8割がかかっていると言われており、現在、歯を失う最大の原因となっています。

歯周病は多くの場合は30代くらいからかかり始め、自覚症状があまりないままゆっくりと10年単位で進行し、60代くらいになると歯を失う人が多くなってきます。

 

2-2むし歯

むし歯は歯がむし歯菌の出す酸によって溶かされ、穴があいていく病気で、歯を失う第二位の原因となっています。

むし歯も歯周病と同じく進行性の病気で、成人の場合は過去に治療をしたところからむし歯の再発が起こって歯がボロボロになって抜歯となるケースが多く見られます。

 

2-3歯の破折

歯の破折は神経の治療をした歯に多く見られるもので、特に神経を失ってもろくなった歯に差し歯が施されているケースにおいて多く見られます

神経を抜いた歯は、歯に栄養が送られなくなるため、枯れ木のようにもろくなり、衝撃で割れやすくなります。

健康な歯の場合だと割れない力であっても、神経のない歯の場合、とくに被せ物を維持するために差し歯にした場合には、歯にくさびのような力がかかることもあり、割れやすくなります。

 

2-4外傷

事故や転倒などによる外力で歯をぶつけて失ってしまう場合です。
これは頻度としては多くはありませんが、歯を失う原因となります。

 

3.自分の歯を残すためにできること

3.自分の歯を残すためにできること

3-1毎日の正しいケア

歯を健康に保つための一番の基本となるのは、やはり毎日のお手入れです。
ただし、歯磨きをただやみくもにやっても正しい方法でケアができていなければ効果は落ちてしまいます。

最低でも1日に2回(朝と夜)は歯磨きをし、奥歯の溝、歯と歯の間、歯と歯茎の間の汚れの溜まりやすい場所を丁寧に磨くようにしましょう。

 

3-2歯科での定期的なメンテナンス

毎日のセルフケアだけでは磨き残しが蓄積してしまうため、定期的に歯科医院でプロのクリーニングを受けましょう。

また、初期のむし歯や歯周病などは自分で見つけられないため、3~6か月に一度くらいの間隔で検診を受け、早期発見、早期治療を心がけることが大切です。

 

3-3健康的な食生活・生活習慣

糖分の多い食生活はむし歯や歯周病のリスクを高めますので、糖分の摂取に気を付けてバランスの取れた食生活を意識しましょう。

また、喫煙や肥満といった要因は歯周病のリスクを高めることが分かっていますので、健康的な生活習慣を心がけることも大事です。

 

3-4歯ぎしり対策

食いしばりや夜間に歯ぎしりをしている人は、歯が破折するリスクが高くなります。
日中の食いしばりは意識してやめることができますが、夜間の歯ぎしりに関してはコントロールが難しいので、歯科で歯ぎしりから歯を守るマウスピースを作ってもらい、夜間に装着するのが歯の破折防止に効果的です。

 

4.予防歯科のすすめ

 

日本ではまだ多くの人が、むし歯や歯周病で歯にトラブルが出てから歯医者で治療を受ける、という形で歯科とかかわっています。

もちろん、歯にトラブルが起こったら歯医者で治療を受けるということは大切なのですが、実際、むし歯や歯周病というのはある程度進行してからでないと自覚症状を起こしません。

そのため、何らかの症状が起こってから歯医者に行ってからでは、手遅れになっているということも少なくありません。

また、むし歯や歯周病は治療を受けたとしても、元通りに治るというわけではなく、進行を止めることしかできないので、そこから再発をすると歯を失う可能性が高くなります。

そこでおすすめしたいのが「予防歯科」です。

予防歯科は、特に歯に異常を感じていなくても、定期的に歯科に通い、検診やクリーニングを受け、むし歯・歯周病の予防、早期発見・早期治療を可能にする歯科との関わり方のことを言います。

予防歯科を実践していくことで、むし歯や歯周病にかかる、もしくは進行させるリスクを大幅に減らし、歯を長持ちさせられる可能性が大きく高まります

 

5.まとめ

 

歯が健康なうちは歯の価値を意識することはありませんが、歯の一本の価値は数百万円にも値する、とも言われます。

歯を失っても治療によって噛む機能や見た目の回復は可能ではありますが、やはりもともとの天然の歯にはどうやってもかなわないのです。

歯は1本1本が独立しているように見えて、実はそれぞれが調和を保ちながら存在しているため、1本でも失うとみるみるバランスを崩し、歯を次々に失うループに入りやすくなります。

そのため、若いうちから予防歯科を実践して、なるべく歯を大切に残せるようにしていきましょう。すでに歯を失い始めている人でも、予防歯科を始めることでそれ以上の悪化をなるべく食い止めることは可能ですので、歯をなるべく残すためにもぜひ、今回の内容を参考にしてみてください。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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