歯周病・歯槽膿漏は歯磨きで治せる?セルフケアの限界とは

歯周病・歯槽膿漏は歯磨きで治せる?セルフケアの限界とは
「歯茎から血が出る」「歯茎が腫れる」「歯茎から膿が出る」

このような歯茎トラブルに悩まされていませんか?
歯茎のトラブルを起こす「歯周病」は、歯の周囲に溜まった細菌が原因であることが知られており、歯の周りの汚れを取り除こうと、歯磨きを一生懸命頑張って改善を試みている人もいるかもしれません。

ですが、歯周病は間違ったセルフケアを続けていると、歯を早期に失ってしまうこともあります。

そこで今回は、歯周病のセルフケアの限界やよくある勘違い、プロのケアの必要性、自宅でのセルフケアをより効果的に行う方法などについて歯科医師が、経験と科学的根拠に基づいてわかりやすく解説していきます。

歯周病は進行性の病気ですが、正しい対処を行うことで進行を止めたり、状況を改善したりすることも可能です。

歯周病を改善して歯を長持ちさせたい、という方はぜひ今回の内容に目を通してみてくださいね。

 

1.はじめに:歯科医師としてお伝えしたい結論

 

1-1「歯周病」と「歯槽膿漏」の違いは?

まず、「歯周病」と「歯槽膿漏」という言葉についてご説明します。
「歯槽膿漏」は「歯茎から膿が出る」という様子を表した言葉で、かつてよく使われていていましたが、現在は「歯周病」という言葉でまとめて表現されます。

そのため、ここでは「歯槽膿漏」も「歯周病」に統一して話を進めていきます。

 

1-2歯周病は歯磨きだけで治る?

多くの患者さんを見てきた結論から言うと、歯周病はよっぽど初期の段階を除き「歯磨きだけで治すことは難しい」です。

「歯周病は歯の周囲に溜まった汚れが原因なのであれば、それを歯ブラシでこまめに落とせば大丈夫では?」と思うのも当然です。

ですが、歯周病が進行するにつれてセルフケアだけでは進行を防ぐには不十分となってしまい、多くの方が歯周病を悪化させてしまっているのが現状です。

 

2. なぜ歯磨きだけでは「限界」なの?

2. なぜ歯磨きだけでは「限界」なの?

なぜ、歯磨きだけでは歯周病を改善するのに限界があるのか、その理由は主に次の3つが関係しています。

 

2-1歯石は歯ブラシでは落とせない

歯磨きがしっかりとできていないところには「歯垢」というカスのようなものが溜まります。これは細菌が固まってできたものであり、時間が経つとだんだんと固まって「歯石」に変わっていきます。

一旦歯石になってしまうと、歯ブラシで落とすことができなくなり、歯周病を悪化させる原因になりますので、歯科医院で取り除く必要があります。

 

2-2深くなった歯茎の溝(歯周ポケット)まで歯ブラシが届かない

軽度の歯周病を通り越して進行すると、歯と歯茎の溝がだんだんと深くなり、「歯周ポケット」という深い溝が形成されます。

この深い溝には歯周病の細菌が住みつきやすいのですが、歯ブラシでは届かないため、原因が取り除かれず、歯周病がどんどん悪化してしまうことになります。

 

2-3細菌の塊(バイオフィルム)を取り残してしまう

口の中の細菌は集合体を作り、バイオフィルムと呼ばれるヌルヌルした膜を作ります。
これは、お風呂や排水溝のぬめりと同じようなもので、こすり取らなければ落とすことができません。

ですが、歯の周囲を100%磨き切ることは不可能なので、このようなバイオフィルムが蓄積してやがて歯周病を発症、悪化させる原因になってしまいます。

 

3. 「症状がない」と「治癒」の決定的な違い

 

通常、なんらかの症状を感じないと「治った」と思いがちですが、歯周病の場合はそれが当てはまりません。両者の違いについて見て見ましょう。

 

3-1「症状がない」のは慢性状態にあるだけ、ということも

歯周病の特徴として「炎症を起こしている時以外はあまり自覚症状を感じない」、ということがあります。

ですが、「症状がない」イコール「治った」ということではありません。
歯周病は通常、あまり症状を出さない「慢性」の状態であることが多く、このような状態にある時には、激しい炎症を起こさないので、

・歯茎の出血
・歯茎の腫れ
・歯茎の膿
・痛み

といった症状が現れず、「問題がない」「治った」と思ってしまいがちです。

ですが、免疫力が低下した際などには急性症状を起こし、強い症状が現れ、状況も一気に悪化してしまいます。

 

3-2歯周病が「治癒」するとはどういう状態?

歯周病は子どもや若年者に見られるごく初期の「歯肉炎」の段階であれば、骨の破壊がまだないので、完全に元の状態に「治癒」させることは可能です。

ですが、中年以降に多い「歯周炎」に進行してしまうと、骨が破壊され始めるので元の健康な状態に「治癒」させることはできません。

しかし、状況が改善して

・歯周ポケットが浅くなる
・歯石や細菌が取り除かれている
・炎症が起こっていない状態が維持されている

といった状態になれば、歯茎は健康を取り戻し、進行が止まり、問題を起こしにくくなるので、「治癒」とみなされます。
そのため、歯周病治療を行う場合には、この状態を目指していきます。

 

4. 歯科医院で行う「プロフェッショナルケア」とは

4. 歯科医院で行う「プロフェッショナルケア」とは

歯科医院ではセルフケアでは改善できない歯周病の原因に対して、次のような専門的なケアで悪化を防ぎ、治癒に導きます。

 

4-1ブラッシング指導

専門家が正しい歯の磨き方について指導を行います。実際歯磨きをしていてもきちんと磨けていないと意味がありませんので、これは健康な歯茎を維持するために大事なステップとなります。

 

4-2スケーリング

歯の表面、歯茎の境目に付いた歯石を機械で細かい振動によって弾き飛ばすように取り除きます。

 

4-3スケーリング・ルートプレーニング

歯周ポケットが深くなっているケースでは、ポケットの奥の歯根表面についた歯石や細菌を丁寧に器具で擦り取るように落としていきます。

 

4-4クリーニング(PMTC)

歯ブラシで落とせないバイオフィルムを、隅々までペーストや器具を使って磨き上げていきます。

 

5. 自宅でのセルフケアをより効果的に行う方法

 

上で述べてきたように、歯周病対策としてはセルフケアだけでは限界があるので、歯科医院でのプロフェッショナルケアも受けることが不可欠です。

ですが、やはり何と言っても「毎日のケアがどのくらいきちんとできているか?」ということが歯茎の状態を大きく左右することは言うまでもありません。

ただやみくもに漫然と磨くのと、ポイントをしっかりと丁寧に磨いているのとでは、やはり歯茎の状態には違いが出てきます。

自宅でのセルフケアを効果的に行うためには、次のようなことを実践してみてください。

・歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも併用する
・汚れの溜まりやすいポイントを狙って磨くようにする
・健康的な食生活を意識する

歯の磨き方に関しては、まずは歯科医院でブラッシング指導を受けて、ご自分のお口の状態に合った方法を実践するようにしましょう。

また、歯周病は食生活の影響も受けやすい病気で、とくに糖分の摂取が多いと悪化しやすいということが分かっています。そのため、間食や糖分の摂り過ぎは控え、健康的な食生活を意識することも歯茎を健康に保つ上で欠かせません

 

6.まとめ

 

歯周病・歯槽膿漏を悪化させず、治癒に導くためには、セルフケアだけでも歯科医院のケアだけでも不十分で、両立していくことが欠かせません。

歯周病は生活習慣病の一つとしても数えられており、毎日の生活習慣、食習慣、お口のケアの取り組みによって改善していくことが可能です。

近年では歯周病と全身の病気との関連性が次々に明らかになってきており、歯周病ケアに取り組むことで全身の病気予防にもつなげられるといった側面も大きいので、
ぜひ皆さんも、健康維持のために歯科医院と二人三脚で取り組んでみられることをおすすめします。

関連する診療メニュー

FacebookTwitter

この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

この記事の監修者

なかむら歯科クリニック
理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

プロフィールを見る

こちらの記事もおすすめ!

歯や歯ぐきを押すと痛い!原因は?治療法・対処方法はあるの?
歯周病2024.09.28

歯や歯ぐきを押すと痛い!原因は?治療法・対処方法はあるの?

歯茎から膿が出る原因、治療法と応急処置の方法は?
むし歯2023.07.27

歯茎から膿が出る原因、治療法と応急処置の方法は?

歯茎が腫れて痛いときどう対処すればいいの?考えられる原因は?
歯周病2023.02.27

歯茎が腫れて痛いときどう対処すればいいの?考えられる原因は?

歯周病の予防と早産の関係とは?妊婦さんの歯周病の予防方法について
歯周病2022.10.26

歯周病の予防と早産の関係とは?妊婦さんの歯周病の予防方法について

突然歯が痛み出したときの原因と対処法について
むし歯2023.02.26

突然歯が痛み出したときの原因と対処法について

歯周病の予防と糖尿病や全身疾患の関係とは
歯周病2022.10.26

歯周病の予防と糖尿病や全身疾患の関係とは