親知らず抜歯後に後遺症が残ることはある？対策法についても解説！
親知らずは生えてこない人もいますが、生えてくる場合には虫歯や歯茎の炎症などさまざまなトラブルを起こす原因になることが多いため、抜歯を勧められることも少なくなく、実際に抜いた経験のある人もいることでしょう。
親知らず抜歯では、もともと埋まっていた歯を抜くため、麻酔が切れた後には痛みや腫れといった症状が出てくるのはある程度避けられませんが、ほとんどの場合には問題なく回復していきます。
ところが、数少ないケースでは抜歯後しばらく経っても不快症状が続く、といったような後遺症が残る場合もあります。
そこで今回は、
・親知らずの抜歯後に起こりうる後遺症
・親知らず抜歯後の後遺症の治療法
・親知らず抜歯後の後遺症を予防するための方法
についてご紹介します。
1.親知らずの抜歯後に起こりうる後遺症
親知らず抜歯後に起こりうる後遺症としては、次のようなものが挙げられます。
1-1ドライソケット
ドライソケットとは、特に下顎で深く埋まっていた親知らずを抜いた後に起こりやすい治癒異常で、抜いた後に血が十分に傷口に溜まらないことで骨が露出し、激痛が長く続きます。頻度としては親知らず抜歯のうちの数％程度に見られます。
通常であれば抜いた後の痛みは、抜いてから2,3日以降にだんだんと治まっていきますが、ドライソケットになってしまうと2,3日を過ぎたあたりから逆に痛みが強くなっていき、2週間以上激痛が続くこともあります。
1-2開口障害
親知らずを抜いた後の炎症が口を開け閉めする咀嚼筋にまで及んでしまうと、本来指3～4本分開くはずの口が1本分くらいしか開かなくなる、ということが起こり、食事などの際に支障をきたしてしまいます。
また、細菌感染によって周囲が腫れることによっても口が開きづらくなることがあります。
1-3麻痺やしびれ
下あごの内部には大きな神経が走っており、親知らずがその神経に近い場所にある場合、抜歯の際に神経が傷ついてしまうことがあります。
そうすると、下唇や下あごの皮膚に麻痺・しびれの症状が出ることがあります。
神経は一度傷つくと、修復に時間がかかるため、回復するのに数か月単位続くことも多いです。
また、麻酔の影響で麻痺やしびれが残ることもあります。
1-4上顎洞穿孔
上顎洞とは、副鼻腔のうちの一つで、上の親知らずの上方に位置しています。
人によっては親知らずと上顎洞が接していることがあり、そのような場合には親知らずを抜歯すると上顎洞に穴が開いて口の中とつながってしまうことがあります。
そうすると、抜歯部の出血が鼻から出てきたり、水を飲んだ際に鼻から出てきたり、といったことが起こってきます。
また、まれなケースで親知らずが上顎洞の中に入ってしまうこともあります。
1-5皮下気腫
下の親知らずを抜歯する際、骨や親知らずを削って抜歯した場合などにおいて、抜歯をした傷口から空気が入り、突然頬やあごが大きく腫れることがあります。
気腫の場合、特徴的な症状として、腫れている部分を触るとプチプチと音がします。
1-6内出血
こちらも下の親知らずを抜歯した際に起こることがあるもので、特に親知らずや骨を削ったりした処置を行なった場合に内出血によって皮膚が紫色や黄色っぽくなります。
内出血は通常、抜歯後3～5日程度で濃くなって紫色に、1週間程度で黄色っぽく変化して10日～2週間くらいで消えていきます。
2.親知らず抜歯後の後遺症の治療法
親知らず抜歯後に後遺症が出てしまった場合、次のような治療法を行います。
2-1ドライソケットの場合
ドライソケットになると強い痛みが出ますので、痛みに対して鎮痛剤を服用していただくのと、感染予防として抗生剤の薬も処方されます。
また、状況に応じて抜いた穴を洗浄、消毒して抗生剤の軟膏を塗布したり、軟膏を含ませたガーゼで骨の表面を保護したりといったことも行います。
治りを早めるために、麻酔をしてドライソケット内部を器具で引っ搔いて出血させ、血で穴を再び覆うということを試みる場合もあります。
2-2開口障害の場合
開口障害は親知らず抜歯後には珍しくない反応であり、通常は1週間～10日くらいでおさまっていきます。
炎症、腫れをスムーズに落ち着かせるためにも、抜歯後に出される抗生剤はしっかりと服用するようにしましょう。
2-3麻痺やしびれの場合
神経はダメージを受けた後、一般的には回復するのに数か月を要しますが、治りを早める目的でビタミン剤の処方やレーザー照射などを行うこともあります。
2-4上顎洞穿孔の場合
穿孔した部分の穴が小さければ自然に塞がっていくことが多いですが、穴が大きい場合には穴を塞ぐ処置が必要になります。いずれにしても鼻や口に圧をかけると塞がりかかった部分が再び開いてしまいやすいため、注意が必要です。
親知らずが上顎洞に入ってしまった場合には、口腔外科で摘出を行う必要があります。
2-5皮下気腫の場合
空気は徐々に吸収されて腫れも引いていきますが、空気が入った際に口内の細菌を組織に入れてしまっている可能性もあるため、抗生剤を投与することもあります。
2-6内出血の場合
内出血はほうっておいても自然になくなっていきますので、通常、経過観察をしていきます。
3.親知らずの抜歯後に後遺症が残らないように予防する方法
親知らず抜歯後の後遺症は、親知らずの位置、埋まり方などによっては避けられない場合もありますが、予防できるものもあります。
後遺症をできるだけ避けるために自分でできる対策法としては次のようなことがあります。
3-1抜歯後にうがいをなるべく控える
抜歯後には出血しますが、血が溜まって気持ち悪いからといってうがいをどんどんしてしまうと、抜歯をした部分に溜まった血の塊が流れてしまい、ドライソケットを引き起こす原因になります。
そのため、出血に対してはガーゼを噛んで圧迫して止血を試みましょう。
3-2タバコを吸わない
タバコを吸うと血の巡りが悪くなってドライソケットを招きやすくなりますので、抜歯後には傷口が落ち着くまでタバコは控えるようにしましょう。
3-3痛みが出ないうちに抜く
親知らずが痛くなってから抜く場合、炎症が強い部分には麻酔が効きづらくなりますので何本も麻酔を打たなければならなくなります。
すると、麻酔に含まれる血管収縮薬の影響で出血があまり起こらなくなり、結果的に抜歯をした部分に血が溜まらずドライソケットが起こりやすくなります。
そのため、親知らずは痛みが出ていないうちに抜くのがおすすめです。
3-4できるだけ若いうちに抜く
親知らずは若い時の方が骨がやわらかいため、抜歯もスムーズに進みます。
歳をとるにつれて骨が硬くなり、抜きにくくなるので抜歯に時間がかかりやすくなり、ダメージが加わりやすくなる分、痛みや腫れ、ドライソケットなどのリスクが高くなります。
4.まとめ
親知らず抜歯後の後遺症は頻度が少ないものの、時には避けられない場合もあります。
ただし、ご自身が心がけることで予防できる後遺症もありますので、ぜひ今回の内容を参考にしていただき、辛い後遺症をなるべく避けられるようにしていきましょう。
親知らず抜歯はだれしも積極的にやりたいものではありませんが、抜いたほうが良い親知らずの抜歯を後回しにしていると、だんだんと抜きにくくなり、後遺症の出る確率が高くなってしまいますので、抜いたほうが良いということが分かったら、なるべく早めに抜歯をしておくのがおすすめです。
この記事の監修者
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