親知らずがむし歯に・・抜く?治す?どうしたらいい?

親知らずがむし歯に・・抜く?治す?どうしたらいい?
親知らずとは10代後半くらいから生えてくる一番奥の歯のことで、前から数えると8番目、3番目の大臼歯(大きな奥歯)に当たります。

親知らずは実はむし歯リスクの高い歯です。
実際、親知らずがむし歯になって痛い思いをする人も少なくありません。

ですが、親知らずは「喉に近い位置」というかなり奥の場所にあることから、他の歯と違ってむし歯治療自体が困難であることも少なくありません。

実際に親知らずにむし歯ができてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?

今回は、

  • 親知らずはなぜむし歯になりやすいのか
  • 親知らずのむし歯を放置するリスク
  • むし歯になった親知らずは抜いたほうがいいのか
  • 親知らずのむし歯の治療法

についてわかりやすくご紹介していきます。

親知らずが生えている人、実際に親知らずがむし歯になってしまっている人は、できるだけ辛い思いをしないためにも知っておいた方がいい内容となっていますので、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。

 

1.親知らずはむし歯になりやすい?

冒頭でもふれたように、親知らずはむし歯になりやすい歯です。
その理由として次のようなことが挙げられます。

 

1-1歯ブラシが届きにくいから

親知らずは「喉に近い場所」というかなり口の奥に位置しているため、意識しないで歯みがきをしている場合、歯ブラシが当たっていないことが多いものです。

そのため、歯の表面にプラーク(歯垢)が蓄積し、その結果むし歯ができてしまうことが多いです。

 

1-2まっすぐに生えないことが多いから

親知らずは他の歯と違い、生える場所が十分にないことが多い、もともと横向きに埋まっていることが多い、といった理由から正常にまっすぐ生えないことも少なくありません。

このように生え方が異常だと、隣の歯との間に汚れが溜まりやすくなり、そこからむし歯になることがよくあります。

 

1-3生え切っていないことが多いから

親知らずは10代後半くらいから生えることが多いですが、30代以降になっても生えることがあり、生え切っていない状態で歯茎が中途半端にかぶったまま長く留まることもよくあります。

このような状態が続くと、歯茎がかぶっているところが不潔な状態になり、そこからむし歯ができやすくなります。

 

2.親知らずのむし歯を放置するとリスクがある?

2.親知らずのむし歯を放置するとリスクがある?

親知らずのむし歯を放置すると、次のようなリスクがあります。

 

2-1隣の歯にむし歯を作ってしまう

特に親知らずが斜めに傾いていたり、横向きに倒れていたりする場合、隣の歯との間に汚れが溜まりやすくなるため、隣の歯にもむし歯を作りやすくなります。
結果として、隣の歯まで抜歯になることもあります。

 

2-2 不快な口臭の原因になる

むし歯の穴の中に食べかすが詰まったり細菌が繁殖したりすると、悪臭を放ち、持続的な不快な口臭の原因にもなります。

 

2-3智歯周囲炎(ちししゅういえん)を起こすリスクがある

むし歯ができるような不潔な状態を放置していると、細菌が歯茎にも炎症を引き起こし、親知らずの周囲の歯茎の炎症である「智歯周囲炎」の原因にもなります。

智歯周囲炎になると、歯茎の痛みや腫れ、出血、発熱、あごのリンパ節の腫れ、顔の腫れ、喉の痛み、口の開きづらさなどの症状を引き起こします。

 

2-4 感染が喉に広がり重症化のリスクも

むし歯が歯根にまで達し、そこから感染が骨の方に行くと、そこからさらに周囲に感染が広がり、顔や首の広範囲に炎症を引き起こす蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こすこともあります。

蜂窩織炎になると、顔が首までパンパンに腫れる、強い痛み、高熱といった症状が起こります。

また、血管の中で細菌が繁殖する「敗血症」を引き起こして命が危険にさらされることもあります。とくに糖尿病など免疫が低下している方の場合にはリスクが高くなるため、注意が必要です。

 

2-5抜歯が困難になる

むし歯によって歯がボロボロになってしまうと、抜歯をするのに器具を引っかけるところがなくなってしまい、抜歯が困難になって手術時間が長くなり、抜歯後の痛みや腫れも強く出る可能性が高くなります。

また、親知らずやその周囲に感染、炎症が起こっていることで麻酔が効きにくくなり、抜歯中にも辛い痛みを感じやすくなります。

 

3.むし歯になった親知らずは抜歯した方がいい?

 

むし歯になった親知らずを抜いたほうがいいかどうかは、ケースバイケースです。
抜かなくてもいいケース、抜いたほうがいいケース、それぞれについて見ていきましょう。

 

3-1抜かなくてもいいケース

  • むし歯が小さめで簡単に治療ができる
  • まっすぐきれいに生えている
  • 治療後に親知らずをしっかりと歯磨きできる

といった条件がそろっている場合、親知らずを抜かずにむし歯治療をして残すという選択肢もアリでしょう。

 

3-2抜いたほうがいいケース

  • 親知らずが横向き、斜めに生えている
  • 歯茎がかぶっている
  • 隣の歯にもむし歯を作っている
  • むし歯が大きくなっている
  • 清掃状態が良くない
  • 智歯周囲炎を繰り返している
  • 嘔吐反射が強くて、治療が難しい

このような場合には、むし歯治療をしても非常に治療が困難になる、もしくは治療をしてもその後にトラブルが再発するリスクが高いため、抜歯をした方がよいでしょう。

 

4.親知らずのむし歯の治療法について

4.親知らずのむし歯の治療法について

親知らずのむし歯の治療法は、むし歯の進行度合い、歯の生え方、周囲の歯茎の状態などによって異なります。

 

4-1詰め物による治療

むし歯が小さめの場合、通常のむし歯治療と同様に、むし歯の部分を削ってレジン(歯科用プラスチック)をつめるか、範囲が広ければ型をとって金属やセラミックを詰める治療を行う、という治療が可能です。

レジンを詰める治療の場合、削ってその場で詰め物をし、一回で治療を済ませることができるので、比較的治療も楽で行われることが多いですが、金属やセラミックなど、型をとる必要のある場合、歯の位置的に型取りが困難になることが多いため、実際、あまり行われることはありません。

 

4-2根の治療(根管治療)

むし歯が進行して神経まで達している場合には、神経を取り除き、根の中を清掃、消毒して塞ぐ「根管治療」も可能ですが、この治療は長時間口を開ける必要がある、器具が奥まで入りにくい、といったことから治療が非常に困難であるため、通常はあまり行われず、抜歯となることが多いです。

 

4-3抜歯

親知らずの生え方が悪い、むし歯が大きい、歯茎の炎症を繰り返している、隣の歯にむし歯を作っている、親知らずの清潔を保てない、というような場合には、むし歯を削って保存する治療は選択せず、残しておくことで起こってくるさまざまなリスクを避けるためにも、通常は抜歯をすることが強く推奨されます。

 

5.まとめ

親知らずがある人にとっては誰にとっても無関係ではない「むし歯」
親知らずは他の歯に比べてむし歯リスクが高く、きちんと磨いているつもりでも磨けておらず、むし歯になることも少なくありません。

しかもむし歯になってしまうと治療自体が困難で大変な思いをしやすいですし、少しでも進行するとさらに治療が難しくなって抜歯の選択肢しかなくなってしまうことが多いのが親知らずのむし歯の注意点です。

そのため、親知らずがある人は、親知らずがむし歯にならないよう、毎日意識して親知らずまでしっかりと歯ブラシを当てて磨くようにしましょう。

ただし、親知らずの生え方が悪い場合にはいくら歯磨きを頑張っても磨き切ることが不可能で、いずれむし歯を作って様々なトラブルの原因となりますので、できるだけ早めに抜歯をすることをおすすめします。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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