子どもの親知らず、早く抜歯したほうがいいの?

子どもの親知らず、早く抜歯したほうがいいの?
親知らずで辛い思いをしたことのある人もいるのではないでしょうか。親知らずというのは、18歳前後から一番奥に生えてくる大臼歯で、歯茎が腫れたり、虫歯ができたりなど、さまざまな問題を起こすことの多い歯です。

 

そのため、大人になってから抜歯されることが多い親知らずですが、実は、親知らずがまだ卵の段階である子どもの時期に抜くことで、将来的な痛みや腫れなどのトラブルを未然に防ぎ、また、抜歯の際に辛い思いをすることなく、しかもリスクを抑えて抜くことができる、ということをご存知ですか?

 

1.親知らずって抜いた方がいい?

 

親知らずを抜いた方が良いか、というのは、よく議論になるところでもありますが、それはその人の親知らずの状態、お口の健康状態などによっても変わってきます。つまり、親知らずを抜いた方が良いか、というのはその人の状況によります。

 

しかし、親知らずは噛む機能にはほとんど関与していないので、実際親知らずを抜いたからといって困るということはほぼありません。そのため、将来的に起こりうるさまざまなトラブルを予防するという意味合いでも、骨がやわらかくて抜きやすい若いうちに抜いておくのがよいと言われています。

 

1-1 大昔は必要な歯だった親知らず

 

太古の昔、人間は硬い木の実や、火を通していない硬いものが主食で、歯を酷使していましたので、親知らずは他の歯と同様、必要な歯であったと言われています。ところが、文明が進むにつれて、火を使うようになり、近代になると加工食品などやわらかい食事内容も増えてきたため、顎が退化し、親知らずの生える場所が十分になくなってきたと言われています。

 

1-2 子どもの親知らずが生える時期

 

親知らずが実際に歯茎から出てくるのは、思春期以降の18歳前後くらいからです。ただし、人によっては30代以降に生えてくることもあります。しかし、全ての人に親知らずが生えてくるわけではなく、骨に埋まったまま一生出てこないこともありますし、元々親知らずが備わっていない人もいます。

 

ちなみに、親知らずができ始める時期は、5〜6歳くらいで、最初はまだ石灰化しておらず、やわらかい状態で、レントゲンにもあまりはっきり写りません。その後、だんだんと形ができていき、硬さも増して、17歳くらいになると、歯根の先端の部分までできあがっていきます。

 

1-3 子どもの親知らずを抜くのに最適な時期とは?

 

親知らずを抜く場合、一般的には親知らずが生えてから抜くことが多いです。具体的には18歳以降といったところです。

 

ですが、親知らずがまだ卵の状態である「歯胚(しはい)」のうちに抜くということも可能です。実際、親知らずが完全にできて硬くなってから抜くよりも、まだやわらかい歯胚のうちに抜く方が、簡単に抜くことができますし、術後の痛みや腫れも軽くて済みます。

 

また、親知らずの手前の12歳臼歯が生えるくらいの時期になると、周囲の骨が発育してくるので、親知らずは相対的に骨の奥の部分に引っ込むような形になり、次第に抜きにくくなっていきます。

 

そのため、具体的には、7〜10歳(小学校2年生〜4年生)くらいに抜くのがお子さんにとって最も楽な時期だとも言えます。

 

2.親知らずを放っておくと起きるトラブル

 

2.親知らずを放っておくと起きるトラブル

 

親知らずを残しておいても、問題が起きないケースというのはあります。しかし、そういったケースというのは比較的稀で、多くの場合、次のようなトラブルを引き起こします。

 

2-1 虫歯や歯周病

 

親知らずの位置はかなり奥の、喉に近い位置です。そのため、歯磨きの際に磨き残しが出やすく、虫歯や歯周病にかかるリスクが高くなります。これは親知らずだけでなく、手前の歯にもそのようなリスクを同時にもたらします。

 

2-2 智歯周囲炎

 

これは、親知らず周囲の歯茎の炎症です。親知らず周囲の歯磨きが不十分になりやすいことや、親知らずが半分埋まったままの状態であるなどの理由により、親知らず周囲の歯茎に強い炎症を起こし、大きく腫れることがあります。場合によっては感染が周囲組織に広がり、発熱したり、お口が開きづらくなったりすることもあります。

 

2-3 歯並びがズレる

 

親知らずが生える際に、手前の歯を押してしまうことで、前歯の歯並びが重なってしまったり、手前の歯を押し出してしまったりすることがあります。そのため、矯正治療を行う場合には、そのようなことが後になって起こらないように、親知らずの抜歯は積極的に行います。

 

2-4 顎関節症

 

親知らずが生える位置によっては、噛み合わせの歯との位置関係によって、噛む際に歯がずれて顎関節症を起こし、顎の痛みや口の開きづらさなどの症状を起こすことがあります。

 

2-5 口内炎

 

親知らずの生える方向が傾いていたりする場合、お口の中の粘膜を傷つけて口内炎を起こすことがあります。

 

2-6 嚢胞(のうほう)

 

顎の大きさが小さいなどの理由で、親知らずの生えるスペースが少ない場合、親知らずが生えてこない状態のままとなり、親知らずの周囲に嚢胞ができてしまうことがあります。

 

2-7 手前の歯への影響

 

親知らずがあると手前の歯に虫歯ができやすくなる、ということのほかに、親知らずの埋まり方によっては、手前の歯の歯根に食い込むような形となり、その歯根を吸収して溶かしてしまったりして、最終的に抜かなければならなくなることもあります。

 

2-8 強い口臭

 

まず、親知らず周囲に汚れが蓄積しやすいことで口臭を起こしやすくなります。また、親知らずが斜めや横向きに埋まっている場合などは特に、歯茎の溝の中に細菌が繁殖しやすく、歯磨きによってもきれいにすることができないので、強い口臭を引き起こすこともあります。

 

3.歯胚の段階で抜く「早期抜歯」とは

 

3.歯胚の段階で抜く「早期抜歯」とは

 

先ほどもご紹介した、歯の卵の状態である「歯胚」の状態で抜歯を行うことを、早期抜歯(germectomy)といいます。これは、通常、特に、矯正治療を予定しているお子さんの、下の親知らずに対して行われることが多いものです。

 

下の親知らずの場合、親知らず自体が大きく、しかも傾いていたりすることが多いので、完全に歯ができてしまってからでは、親知らず抜歯が大変になってしまうことが珍しくありません。一方、早期抜歯をすることにより、「抜くのが簡単になる」「傷口が小さくて済むので術後の腫れが起こりにくくなる」「短時間で抜ける」などの多くのメリットがあります。

 

上の親知らずに関しては、ほとんどの場合、歯が先細りで抜きやすく、大人になってから抜いても簡単に抜けるのが一般的なので、早期抜歯の必要となるケースはあまりありません。

 

4.まとめ

 

親知らずというのは、ほぼ大人になるまで見えないので、お子さんご本人も親御さんも、生えてくるまでは存在に気づかず、意識することはほとんどないでしょう。ですが、生えてきてしまってからでは、虫歯や歯周病などのリスク、歯並びをずらしてしまうリスクなどが、すでに起こってしまっています。

 

このようなリスクをできるだけゼロにし、辛い思いをなるべく避けるためにも、親知らずの早期抜歯を検討されるのはとても意義があることだと言えるでしょう。

 

親知らずは、パノラマレントゲンと呼ばれる、お口全体の状態を見ることができる大きなレントゲン写真で確認することができますので、お子さんが小学校低学年くらいになったら、一度歯科医師に相談し、歯科医院でパノラマレントゲンを撮って親知らずの状態を確認しておくことをおすすめします。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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