子どもの歯並び② 叢生(そうせい)=前歯がデコボコになるの治療法

子どもの歯並び② 叢生(そうせい)=前歯がデコボコになるの治療法
叢生とは、乱杭歯(らんぐいば、らんぐいし)とも呼ばれているもので、歯が並び切るスペースが足りずにガタガタ・デコボコ重なってしまっている歯並びのことをいいます。日本人の不正咬合の中では一番多く、八重歯も叢生の一種です。

 

叢生は見た目が悪くなってしまうこともありますが、歯ブラシが届きにくい部分が出てきてしまうため、虫歯や歯周病のリスクが高くなるという問題点もあります。

 

今回は、子ども叢生のデメリットや原因、治療法や予防法についてご紹介していきます。

 

1.子どもの叢生(乱杭歯)の原因

 

1.子どもの叢生(乱杭歯)の原因

 

子どもが叢生になってしまう原因として、主に次の3つのことが挙げられます。

 

1-1 顎の大きさと歯の大きさのアンバランス

 

これは、生まれつき、遺伝的な要素も関係していることが多いですが、顎が歯の大きさに対して小さい場合、並びきれずに歯がガタガタになってしまいます。

 

また、これに加えて、あまり噛まないで済むような食事ばかりしている場合、噛む筋肉、舌の筋肉がしっかりと働かなくなるため、顎の成長に影響が出てしまい、それによって叢生が起こるケースが近年増えてきていると言われています。

 

一般的に、乳歯の段階で歯が隙間なく、一見キレイに並んでいる場合、永久歯に生え変わる段階になると、スペースが足りなくなり、叢生になってしまいやすくなります。

 

1-2 乳歯から永久歯の生え変わり時の問題

 

乳歯から永久歯に生え変わる場合、乳歯が抜けてからすぐに永久歯が生えてくる、というのが普通です。ところが、乳歯が抜けた後になかなか永久歯が生えてこない場合、隣の歯が倒れてきたり移動してきたりすることによって、後から生えてくる永久歯の場所が足りなくなり、歯並びが重なってしまいます。

 

特に、乳歯を虫歯で早く抜くことになってしまった場合や、外傷で早期に乳歯を失った場合にこのようなことが起きやすくなります。

 

1-3 口周辺の癖

 

指しゃぶりや、唇を噛む癖、爪を噛む癖などにより歯に力をかけてしまう場合、また口呼吸をしていることによりお口周辺の筋肉が正常に働かない場合にも、叢生を引き起こしてしまうことがあります。

 

2.子どもの叢生を放置することによって起こるデメリット

 

2-1虫歯・歯周病にかかりやすくなる

 

歯並びが重なっていると、重なった部分に磨き残しが出てしまい、虫歯や歯周病を起こしやすくなります。また、治療をしても再発しやすいので、結果的に歯を早く失うことにもつながります。

 

2-2口臭が強くなりやすい

 

歯と歯の重なりの部分に汚れが溜まりやすいのと、虫歯や歯周病が起こりやすくなることで、口臭もキツくなりがちです。

 

2-3歯に着色しやすい

 

歯並びがガタガタだと、引っ込んだ部分には歯ブラシがどうしても当たりづらくなります。そうすると、いつも当たらない部分には飲食物の着色がついてきてしまいます。

 

2-4コンプレックスの原因になる

 

叢生の度合いによっては、見た目が悪くなり、コンプレックスを抱えてしまう原因にもなります。八重歯に関しては、日本では好意的に受け取られることも多いですが、海外ではあまり良い印象を持たれないこともあるようです。

 

2-5 睡眠時無呼吸症の原因になることがある

 

叢生によりお口の内側が狭い状態になっていると、舌が喉の方に沈み込みやすくなります。特に仰向けに眠っている間には、舌はさらに奥に落ち込みますので、気道を塞ぐ形となってしまい、眠っている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症」を引き起こすことがあります。睡眠時無呼吸症になると、日中のだるさや眠気だけでなく、心臓病、脳梗塞、肥満、糖尿病といった全身疾患のリスクを高めるとも言われています。

 

以上のように、叢生は体の健康にとっても悪影響が大きいため、そのような悪影響が起きる前に、成長期の段階で矯正歯科での治療を開始するのが望ましいと言えるでしょう。

 

3.子どもの叢生の治療方法

 

3.子どもの叢生の治療方法

 

3-1 具体的にどんな治療、どんな装置を使う?

 

◆乳歯の段階

乳歯のみの時期の場合には、まだ装置を使った矯正治療は行いません。この段階では、歯並びをいずれ悪くするような悪い癖があるようであれば、癖を取り除く訓練を行っていきます。

 

◆小学生の段階

小学生になって乳歯から永久歯への生え変わりが始まり、その時点で叢生が見られる場合には、歯のねじれや重なりを改善したり、顎を左右に広げる装置(床矯正装置)を入れてスペースを確保したり、ということを行います。これができるのは、成長が盛んな6〜10歳くらいまでです。

 

もし、乳歯を本来生え変わるべき時期よりも早期に失ってしまった場合には、その空いたスペースに他の歯がずれてこないよう、保隙装置(ほげきそうち)というものを入れることもあります。

 

◆全て永久歯に生え変わった後の段階

12歳以降くらいになって、永久歯に全て変わった後の段階では、一般的には、全体的に装置をつける、ワイヤー矯正やマウスピース矯正を行います。この場合、顎を広げることはもうできないため、歯のスペースを確保するために、小臼歯を抜歯して行うことも少なくありません。

 

矯正治療を始めるタイミングによって、上記のように治療の方法が変わってきます。顎の成長段階、そして乳歯から永久歯への交換のタイミングで治療を行うことにより、スペースを確保しやすくなるので、抜歯が避けられる可能性が高くなる、治療費を抑えて治療が行える、といったメリットがあります。

 

3-2 子どもの叢生は自然に治る?

 

一旦悪くなってしまった歯並びというのは、基本的には自然に治るということはありません。ただし、生え変わり、成長の過程で改善する場合もあるため、経過観察をし、矯正治療が必要と思われる場合には、適切なタイミングで治療を行うことが大切です。

 

3-3子どもの叢生治療を始めるベストなタイミングは?

 

矯正治療を開始するタイミングは、ケースバイケースです。個々の症例によって治療内容が変わってくるため、歯並びに不安がある場合には、できるだけ早い年齢のうちから経過観察を続け、その子に合ったタイミングで治療を行うのが理想的です。

 

4.子どもの叢生(そうせい)の予防法について

 

叢生を予防することで、歯磨きがしやすくトラブルの起こりにくい口内環境になる、またコンプレックスになるのを避けられるといったメリットがあります。また、健康面においても大きなメリットがあります。

 

叢生は遺伝的な側面もありますが、後天的なことも原因となっていることが多いため、小さな頃から対策をしておくことで予防することも可能です。

 

叢生を予防するためには、次のようなことに注意してみましょう。

 

4-1 乳歯を健康に保つ

 

乳歯が虫歯になり、早期に抜かなければならなくなると、歯並びがずれて叢生を起こしてしまいます。そうならないためには、小さな頃から歯科で定期検診を受け、乳歯の虫歯予防、虫歯の早期発見・早期治療を心がけることが大事です。

 

4-2 食事の時にはよく噛ませる

 

近年、顎の成長不足により、永久歯の生えるスペースが足りなくなることで叢生になるケースというのが増えています。この原因としては、加工食品などやわらかいものばかり食べることで咀嚼をしなくなっている、ということが挙げられます。食事やおやつには、よく噛ませるような食べ物も取り入れることが大事です。

 

4-3 癖を早めに直す

 

指しゃぶりや唇を噛む、といった癖は歯並びの不正を起こす大きな原因となります。このような癖がある場合、早めにやめさせることが肝心です。

 

5. まとめ

 

歯はできるだけ長く健康に保っていきたいものです。そういった意味では、歯の寿命を縮めてしまいやすい叢生は、とてもデメリットが大きい歯並びだと言えます。お子さんが大人になっても健やかな人生を送るためにも、叢生の傾向がある場合には、早めに歯科で相談しておくようにしましょう。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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