受け口が横顔に与える影響は!?矯正で改善できるの?

受け口が横顔に与える影響は!?矯正で改善できるの?
受け口というのは、普通に噛み合わせた際に下の歯が上の歯よりも前に出ている状態のことを言い、「反対咬合」とか「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼ばれることもあります。

歯並びが悪いと見た目がコンプレックスになってしまうことがありますが、受け口はその中でも特に横顔の見た目に影響が出やすい歯並びであり、気にしている人は多くいます。

今回は、受け口が横顔に与える影響、受け口のデメリット、そして受け口は矯正治療で具体的にどのように改善が可能なのか、ということについてご紹介していきます。

 

1.受け口が横顔に与える影響

 

受け口のタイプには大きく分けて、歯の位置関係だけ反対であるものと、骨格的に反対になっているものの2種類があり、それぞれで横顔の見た目も変わってきます。タイプ別に見ていきましょう。

 

1-1歯だけの反対咬合の場合(歯性反対咬合)

 

上下の骨の大きさや位置には異常がなく、前歯の位置関係だけが反対になっているタイプです。この場合には、上下の顎の大きさに差がないため、横顔的に下顎の突出感はあまりなく、横から(唇を閉じた状態)では反対の噛み合わせであるとわからないケースも多いと言えます。

 

1-2顎の骨ごと反対咬合の場合(骨格性反対咬合)

 

骨の発育自体に異常が起こっており、下顎が上顎よりも大きく、前方に出ているのが特徴的です。こちらは遺伝的な原因であることが多く、「下顎の骨自体が過剰に成長をしてしまった場合」、もしくは「上顎の骨の成長が不十分である場合」の2通りが考えられます。

骨格性の場合には、上下の顎の大きさのギャップにより、横顔の見た目にも違いが出てきます。違いが大きい場合、下顎が大きく前方に張り出し、顔の中央部が凹んだようにも見えるようになり、「しゃくれ」や、「三日月様顔貌(みかづきようがんぼう)」などとも呼ばれるようにもなってきます。

このような骨格性の反対咬合は、日本における発生率としては3~4%程度と言われており、有名人などでもたまに見かけることがあります。

 

2.受け口の横顔以外のデメリットにはどういうものがあるの?

 

2.受け口の横顔以外のデメリットにはどういうものがあるの?

 

受け口である場合、下顎の張り出し感が大きいほど、学校などでからかいの対象になることもあり、コンプレックスになりやすいという大きな問題があります。また、そのほかにも、次のようなさまざまなデメリットがあります。

 

2-1歯がダメージを受けやすい

 

特に骨格性の受け口で、その程度が重度の場合、唇を閉めるのが困難になることで口の内部が乾き気味になってしまいます。そうすると、唾液のさまざまな歯の保護作用が働きづらくなってしまいますので、虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。

そしてそれに加え、噛み合わせ的にも、奥歯だけが噛み合う、という状態になってしまいやすく、一部の歯に過大なダメージがかかることとなり、歯に細かい亀裂が入ってそこから虫歯菌が入り込むことで虫歯になったり、歯周組織が破壊されて歯周病が進行したり、歯自体が割れてしまったりすることもあります。

 

2-2口臭が強くなりやすい

 

口が閉めにくく、口の中が乾き気味になることで、唾液によるお口の自浄作用が起こりにくくなりますので、口内で細菌が大量に繁殖して口臭が強くなりやすい傾向があります。

 

2-3食事がしにくい

 

噛み合わせが悪くなるので、ものが噛みづらい、咀嚼しにくい、といった症状が起こりやすくなります。そうすると、ものがしっかりと噛み切れていない状態で消化管へ行ってしまうため、胃腸にも負担をかけてしまうことになります。

 

2-4発音・滑舌に影響しやすい

 

特に重度の受け口の場合、特定の音(サ行、タ行)が発音しづらく、滑舌が悪くなる傾向があり、他人が言葉を聞き取りづらいなど、コミュニケーションに支障が起こることもあります。

 

2-5顎関節症を起こしやすい

 

下顎の運動に障害が起こりやすいため、顎関節症を引き起こしやすくなります。顎関節症を起こすと、関節部分や顎全体の痛み、顎関節の雑音やお口の開きづらさといった症状が起こってきます。

 

2-6全身的な健康障害

 

食べ物をしっかりと咀嚼できないことで内臓に負担がかかるのに加え、噛み合わせの悪さが原因で頭痛、肩こり、首の痛み、耳鳴り、目まいなど、様々な不定愁訴の原因にもなると言われています。

 

3.受け口による横顔の改善方法・治療法

 

3.受け口による横顔の改善方法・治療法

 

3-1歯性反対咬合の場合

 

歯性反対咬合の場合には、それほど横顔に影響することはありませんが、やはり、不正咬合であることに変わりはないので、横顔に影響はなくとも、矯正治療は受けられることをおすすめします。

歯性の場合には、主に前歯の位置関係だけが問題となるため、部分的な矯正治療や、通常の矯正治療(ワイヤー矯正、マウスピース矯正)で治療が可能です。生え替わり途中のお子さんの場合だと、簡単なマウスピース型の矯正装置を自宅にいる時につけるだけで、費用を抑えて反対の噛み合わせの改善が可能ですので、反対咬合の兆候が見られるならば、できれば早期の対処がおすすめです。

 

3-2骨格性反対咬合の場合

 

骨格性反対咬合の場合、大人の場合と子どもの場合で、治療法が大きく違ってきます。

 

◆子どもの場合
子どもで受け口になっている場合、年齢が低いうちは歯性なのか、骨格性なのかわかりにくいですが、両親のどちらかが骨格性の反対咬合の場合、お子さんも骨格性である可能性があります。

一般的には、2歳までの受け口の50%は自然治癒するとされており、3歳を過ぎても受け口の場合、その90%ほどがその後も受け口になると言われています。

もし、遺伝性の場合でも、下顎の成長を成長期の早い段階から抑制することで、成長のしすぎを抑制することが可能です。

<治療法>
3~6歳くらいの段階での受け口には、自宅にいる間や就寝中に使用する取り外し式のマウスピースタイプの矯正装置がよく使用されます。

ただし、骨格性の疑いが大きい場合には、下顎の過成長を抑制するチンキャップ、上顎の成長を促進して下顎の成長を抑制する上顎前方牽引装置といったものを使用する必要性があります。

また、小学生になって乳歯と永久歯が混在している時期には、拡大床と呼ばれる装置で上顎を広げる、という方法で治療を行うこともあります。

◆大人の場合
大人で骨格性の反対咬合の場合、骨格性の異常が大きいケースほど、通常の歯列矯正では治すことができません。上下の顎のサイズのアンバランスが大きすぎるため、顎の骨を切って短くした上で、歯並びも整える「外科矯正」が必要となってきます。

治療の流れとしては、術前矯正を行った後に外科手術をし、その後にまた術後の矯正、というステップになります。

なお、外科矯正が必要となる場合、「顎変形症」という病名がつくため、保険の適用も可能です。

 

4.受け口は矯正の専門医に相談しましょう

 

受け口は、今回ご紹介したように、骨格性のケースでは、成長期を過ぎている場合には手術が必要となってくる可能性が高くなっていきます。受け口になっていく場合、大体3歳くらいまでにはその兆候は現れ、できるだけ早めの対処をすることで手術を将来的に避けられる可能性も高くなります。

受け口の場合、その診断や的確な対処というのは、他の不正咬合と比べてもシビアになってきますので、是非とも矯正の専門医にかかることをおすすめします。

 

5.まとめ

 

受け口は、大人になってからの治療も可能ではありますが、やはり、横顔などがコンプレックスになりやすく、体にとっても悪影響が大きいため、できるだけ低年齢からの対処がおすすめです。これは、将来的に手術を避けられる可能性がある、という意味でも大事です。

もし、ご自身や配偶者の方が骨格性の受け口の場合、お子さんに遺伝する可能性がありますので、小さなお子さんがいらっしゃる場合、定期的に歯科で診てもらうようにしましょう。

関連する診療メニュー

FacebookTwitter

この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック
理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

プロフィールを見る

こちらの記事もおすすめ!

矯正歯科で抜歯は必要なの?抜歯する理由は?
上下顎前突2023.08.28

矯正歯科で抜歯は必要なの?抜歯する理由は?

子供の反対咬合(受け口・下顎前突)治療は何歳から?
反対咬合(受け口・下顎前突)2022.08.27

子供の反対咬合(受け口・下顎前突)治療は何歳から?