子どもの歯並び③過蓋咬合(かがいこうごう)の原因と治療法

子どもの歯並び③過蓋咬合(かがいこうごう)の原因と治療法
噛み合わせた時に、下の歯がほとんど、もしくはあまり見えない、という場合、過蓋咬合という不正咬合である可能性があります。過蓋咬合は、一見、歯並びが良くて問題がなさそうに見えることもあり、矯正治療が行われることなく、放置されがちな歯並びでもあります。今回は過蓋咬合について、その問題点や原因、治療法などにつてご紹介していきます。

 

1.過蓋咬合とは

 

過蓋咬合とは、「ディープバイト」とも呼ばれている噛み合わせで、上下の歯を噛み合わせた際に、下の前歯が上の歯に深く覆われて隠れてしまう、噛み合わせの深い状態をいいます。

 

1-1正常な噛み合わせの深さとは?

 

正常とされている噛み合わせの深さというのは、下の前歯を上の前歯が1/3から1/4程度覆っている状態だとされています。それ以上に下の歯が上の歯に覆われると、過蓋咬合と呼ばれます。

 

1-2トラブルによって判明することの多い過蓋咬合

 

過蓋咬合は、出っ歯や受け口、ガタガタの歯並びと違って、見た目が悪くならないケースも多くあります。そのため、歯並びそのものに不満を感じて矯正治療を始める、というよりは、何らかの問題や不快症状が起こって歯科医院を受診し、過蓋咬合を指摘されて矯正歯科に紹介され、治療に至るケースも多く見られます。

 

2.過蓋咬合の問題点

 

過蓋咬合の問題点として、次のようなものがあります。

 

2-1奥歯がすり減りやすい

 

噛み込みの深さから奥歯への負担が強くかかることで、奥歯が早期にすり減りやすい傾向があります。

 

2-2下の前歯が上の歯茎を傷つけてしまいやすい

 

奥歯のすり減りに伴い、前歯の噛み込みが深くなり、やがて下の前歯が上の前歯の裏側の歯茎に当たるようになって傷つけてしまい、歯茎に炎症を起こしやすくなります。

 

2-3出っ歯を招くリスクがある

 

上の前歯と下の前歯の位置関係によっては、下の前歯が上の前歯を突き上げてしまい、上の歯がだんだんと出っ歯になっていくことがあります。

 

2-4詰め物や被せ物が外れやすい

 

かみ込みが深いと、歯に強い力がかかります。また、歯の高さが低いため、詰め物や被せ物の維持が取りにくく、詰め物や被せ物、差し歯が脱離を繰り返す傾向があります。

 

2-5顎関節に問題を起こしやすい

 

過蓋咬合の状態だと下顎の運動範囲が制限されがちです。そうすると、あごに負担がかかりやすくなるため、顎関節や周囲の筋肉に痛みを起こしたり、口の開け閉め時に顎から雑音がしたり、口が開きにくくなったりといった顎関節症の症状が起こりやすくなります。

 

2-6ガミースマイルの原因になる

 

上の前歯が下の方に伸びていて過蓋咬合になっている場合、笑った際に歯茎が過剰に露出する「ガミースマイル」になることがあります。

 

過蓋咬合になると、以上のような症状が起こってくる可能性があります。そのため、このようなことを未然に防ぐためには、過蓋咬合の兆候が見られる段階で、乳歯から永久歯に生え変わる成長期のうちに、骨格のバランスが悪くなる前に治療を開始する必要があります。早期に行う小児矯正なら、比較的簡単な装置で治せる可能性が高くなります。

 

3.子どもの過蓋咬合の治療法

 

3.子どもの過蓋咬合の治療法

 

成長発育の盛んな子どもの時期においては、日常の癖を改善したり、小児矯正によって顎のバランスを整えていったりすることで過蓋咬合を予防的に治療することが可能です。

 

小児矯正を行うことで、あごの大きさ、位置のコントロールをしながら永久歯が正しい位置に並びやすくなるため、将来的に本格的な矯正治療が不要になる可能性がありますし、もしくは治療が必要になったとしても、治療の負担や期間を最小限に止めることができます。

 

3-1マウスピース型の装置

 

歯並びや骨格がうまく形成されない場合の大きな原因として、口の周りの筋肉の弱さや間違った使い方、そして、口周辺の癖といったものがあります。

 

特に、過蓋咬合は上下のあごのバランスの悪さや舌・唇の癖などが関係していることが多いため、マウスピース型装置の使用は過蓋咬合の予防に役立ちます

 

シリコンやプラスチックでできたマウスピース型の装置をご自宅にいる間に装着することで、悪い癖の影響を取り除き、口周りの筋肉、舌を鍛えて正常なあごの骨の発達を促し、歯が正しい位置に並ぶように導いていくことができます。

 

3-2あごの骨を拡大する装置

 

あごの成長が盛んで骨のやわらかい小学生の時期に、あごの骨を拡大するための装置を使って上下のあごの骨のバランスを整えていきます。

 

プラスチックとワイヤーでできた「拡大床」と呼ばれる取り外し式の装置を用いるか、もしくは歯にブラケットとワイヤーをつけてあごを拡大していくこともあります。

 

上記の治療以外に、指しゃぶりや頬杖、唇の癖といった癖がある場合には、本人に意識させることで根本的にやめさせていくことも大事です。このような癖の改善は、小児矯正が始められる時期以前の段階で、気がついた時点で、できるだけ早めに行うことが肝心です。

 

あごの成長が終わってから治療をしようとしても、骨格的にアンバランスが出てしまってからでは矯正治療だけでは治せず、あごの骨を切る手術も必要になる可能性が高くなります。

 

4.子供の過蓋咬合の原因について

 

4.子供の過蓋咬合の原因について

 

4-1遺伝的要因

 

過蓋咬合は遺伝的な要因が関係していることもあります。次に挙げるものは遺伝的な要因の可能性がありますが、後天的なものが関係していることもあります。

 

■上顎と下顎のバランスの悪さ

遺伝的な原因で、顎の過成長や下顎の成長不足があり、上下のあごの骨のバランスが悪い場合

 

■歯の生え方

奥歯の高さが足りない、前歯が過剰に長く生えている、歯が内側に倒れて生えているといった歯の生え方

 

4-2後天的要因

 

■口周囲の筋肉の緊張

下唇の力が強く、歯を前方から圧迫するような状態になっていると、下の前歯が内側に倒れてしまい、過蓋咬合の状態になることがあります。

 

■口周辺の癖

下唇を噛んだり吸ったりする、指しゃぶりをしている、頬杖をつく、というような癖がある場合、過蓋咬合を招きやすくなります。

 

■乳歯の早期喪失

たとえば、乳歯がひどい虫歯で早期に歯を失った場合、周囲の歯が寄ってきて、その後に生えてくる永久歯が正しい位置に収まらず、過蓋咬合になることがあります。

 

■歯ぎしりなど過剰な噛み合わせの力

歯ぎしりをしている、噛み合わせの力が強い、というような場合、奥歯のすり減りの度合いが大きくなり、前歯の重なりが大きくなっていきます。

 

■奥歯のひどい虫歯

奥歯のひどい虫歯により歯の高さが低くなった、もしくは抜歯となってしまった場合、かみ合わせが低くなって過蓋咬合になることがあります。

 

5.まとめ

 

過蓋咬合は、歯や歯茎の健康を損なうリスクを高めるだけでなく、上下の顎のバランスが悪くなる噛み合わせなので、放置しておくとさまざまな不調や健康上のトラブルにもつながりかねない歯並びです。また、将来的にさまざまな不快症状から、生活の質を落としてしまうことにもなりかねません。

 

原因としては、遺伝的なことが関係していることもありますが、小さな頃から行っている癖や、生活習慣などが関係して起こっていることも多いため、骨が成長段階にあるうちから対処しておくのがベストです。

 

大人になってからでは治療が大変になってしまう可能性もありますので、お子さんの将来の健康のためにも、もしお子さんが過蓋咬合の可能性がある場合には、早めに矯正歯科を受診されることをおすすめします。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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