八重歯はかわいい？それとも危険？原因と放置リスク、 治療・予防方法を徹底解説
確かに見た目のかわいい八重歯ですが、これは歯科的には「叢生（そうせい）」と呼ばれる不正咬合（悪い歯並び）の一つであり、放置すると様々な悪影響を起こすリスクが高い歯並びとして知られています。
ここでは、八重歯になってしまう原因、放置をすることで起こるリスク、治療法や予防法について、歯科のプロの視点で解説していきます。
現在八重歯になっている方、お子さんを将来八重歯にしたくない、という方にとって参考になる内容となっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
1.八重歯になる原因とは？
八重歯とは、犬歯（前から数えて3番目の歯）が、歯並びから外れて外側に生えてしまっている状態のことを言います。
八重歯になってしまう原因としてはいくつかの要素が考えられます。
一つ一つ見ていきましょう。
1-1歯の生え切るスペースが足りない
歯が生えるためのスペースが十分にないと、後から生えてくる犬歯は歯並びから外れた部分から生えざるを得ません。結果的に、歯並びの外側から生えてきてしまいます。
1-2生え替わりのタイミングに問題がある
乳歯から永久歯に生えかわる際、タイミングがスムーズであれば歯並びが悪くなりにくいですが、タイミングが早すぎたり遅すぎたりすると、歯並びの不正につながります。
1-3口呼吸や癖などの習慣によるもの
あごの骨が成長する段階で、本来鼻で行うべき呼吸を口で行っていると、上あごの骨が十分に成長せず、口で呼吸がしやすいようにあごの形や歯並びが形成されてしまいます。
結果的に、横幅の狭い歯並びになり、歯が並ぶスペース不足を招いてしまいます。
1-4遺伝的要因
あごの大きさ、歯の大きさ、形といったものは遺伝的な影響を受けるため、もともと八重歯になりやすい傾向がある人もいます。
2.八重歯の矯正は必要？リスクを放置するデメリットは？
2-1むし歯や歯周病にかかりやすい
歯の重なり部分に汚れが蓄積しやすいため、そこからむし歯や歯周病が起こり、治療で大変な思いをしたり、結果として将来的に歯の寿命が短くなったり、といったリスクがあります。
2-2唇をけがしやすい
犬歯が外側に出ているので、ぶつけた拍子に唇をケガするリスクが高くなります。
2-3口内炎ができやすい
同様に、犬歯が唇に当たって刺激したり、傷を作ったりしやすいことから、そこから口内炎ができやすくなります。
2-4歯茎が下がりやすい
犬歯が歯並びから外れた部分から生えてくるため、もともと歯の前の骨が薄く、加齢や歯周病の影響により、骨と歯茎が下がりやすい傾向があります。
2-5歯が変色しやすい
唇が閉めにくいことから歯が乾いた状態になりやすいため、食べ物や飲み物の色素が沈着しやすく、歯が黄ばみやすい傾向があります。
2-6口臭の原因になりやすい
歯の重なり部分に汚れや細菌が溜まりやすいため、そこが口臭の発生源になりやすくなります。
2-7他の歯の寿命を縮めやすい
犬歯は、すべての歯の中で最も長い歯根を持っている歯で、歯をずらしたりする際に支点になる役割を持っていますが、八重歯になっていることでその役割が果たせず、他の歯に強い力がかかることで、他の歯の寿命を縮めやすい傾向があります。
2-8顎関節症になりやすい
歯並びが悪いと、あごが本来あるべき動きができなくなることがあり、あごの痛みや雑音、口の開きにくさの症状を伴う「顎関節症」を引き起こして、不快症状に悩まされることもあります。
3.八重歯の治療法・予防法
3-1ワイヤー矯正
歯の1本1本にブラケットという小さな装置をつけ、形状記憶ワイヤーを通して徐々に歯並びを整えていきます。
装置は歯の表側に付ける方法、裏側に付ける方法があります。
ワイヤー矯正は表側に装置が付く場合には「目立つ」というデメリットがありますが、白い装置を使うことでなるべく目立たずにすることも可能です。また、適応範囲が広いので、難しいケースにも対応できます。
3-2マウスピース矯正
代表的なものとしては「インビザライン」が有名で、透明なマウスピースを段階的に交換していくことで徐々に歯並びを整えていきます。
装着していても目立たず、違和感や痛みも少なめで、食事の時には外せるので、見た目や生活の不便さによるストレスを感じたくない人におすすめです。ただし、ワイヤー矯正に比べると適応範囲が狭いため、まずは事前にしっかりと検査をしたうえで治療ができるかどうかを確かめる必要があります。
3-3セラミック矯正
歯を一つ一つ動かしていく矯正治療は治療期間が1年半～2年前後かかるのが一般的ですが、もしもそんなに期間をかけたくない、という場合には、「セラミック矯正」という、歯を削ってセラミックを被せて整える方法もあります。
これは、歯の位置自体は動かさず、表に見える部分だけを整える、という見た目の改善に特化したもので、「歯をたくさん削る必要がある」、「神経を取る治療や抜歯が必要になることも多い」、といった犠牲を払わなければなりません。
そのため、歯にとっては大きな負担となり、結果的に歯の寿命を縮めてしまうこともあるため、注意が必要です。
3-4小児矯正
子どもの時期に八重歯になることが予想される場合には、あごの成長をコントロールしながら犬歯がきれいに生えるようにスペースを作り出す「小児矯正」を行うことで、八重歯になるのを未然に予防することができます。
この方法であれば、簡単な装置で費用を抑えて、しかも、あごの骨の成長を本来あるべき状態に行わせることができるため、健康的に、根本的な治療が可能です。
4.八重歯は矯正する前に抜歯した方がいいの？
矯正治療では、歯を並びきるスペースが確保できない場合、どこかの歯を（通常は前から4番目が多い）抜いて歯を並べる、という「抜歯矯正」を行うことも珍しくありません。
八重歯の場合、「歯並びの外に出ている犬歯を抜けば簡単で良いのでは？」と思われることがありますが、犬歯は先でもふれたように、すべての歯の中で歯根が最も長く、歯をすり合わせる際に支点となる大事な役割を持っている歯であるため、犬歯を抜くということはまず行いません。
なお、八重歯のケースでも、軽度の場合にはどこかの歯を抜歯せずに矯正治療が可能になることもあります。
特に、成長期のお子さんの段階で行う「小児矯正」の場合は、あごの骨の成長をコントロールすることができるので、抜歯をしなくても矯正ができる可能性を大幅に高めることができます。
5.まとめ
八重歯はかわいらしさ、親しみやすさを感じやすく、見た目には好印象を持たれることが多い反面、歯の健康面においては問題を抱えることになりやすく、歯科的な観点から見ると、歯を早く失う危険もあり、放置することはあまりおすすめできない歯並びであると言えます。
今八重歯になっている人でも、できるだけ早めに矯正治療を行うことでそのデメリットを解消することができるので、将来歯を長持ちさせたい、歯のトラブルを避けたい、ということであれば、早めに矯正治療を受けることをおすすめします。
ただし、「セラミック矯正」に関しては、見た目の改善を目的としており、歯の健康という意味では逆効果になる恐れもあるため、慎重に検討するようにしましょう。
八重歯が気になっている人は、まずは歯科で一度相談し、よく話を聞いたうえで後悔のない治療法を選択することをおすすめします。
この記事の監修者
こちらの記事もおすすめ！
