矯正で歯の根っこが短くなるって本当?リスクを最小限に抑えるためにはどうする?

歯並びをきれいにしたい、噛み合わせを改善したい、そう思って矯正治療を調べ始めた時、「歯の根っこが短くなる」というリスクがあることを知ると、不安になってしまいますよね。
実は、矯正治療中に多少の歯根吸収が起きること自体は珍しいことではありません。しかしそれが、歯の寿命や機能に影響を与えるほどの重大な吸収というのは、適切な管理を行うことで、ほとんどの場合、回避することが可能です。
今回は、歯根吸収が起きる原因やリスクを高める要因をわかりやすく解説するとともに、リスクを最小限に抑えるための取り組みについてもご紹介していきます。
現在矯正を検討中の方、すでに矯正治療中の方も、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。
1. 矯正で「歯の根が短くなる」とはどういうこと?
矯正治療についてインターネットで調べていると、「歯の根が短くなる」「歯根吸収が起きる」という内容をほとんどの方は見ることになるでしょう。
「歯の根が短くなる」と「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」とは、同じことを意味しており、
矯正の力によって歯の根っこが少しずつ短くなってしまう現象のことをいいます。
このようなことを目にすると、「矯正を受けたせいで歯がダメになってしまうのでは?」と心配になってしまいますよね。
ですが、結論からお伝えすると、ごくわずかな歯根吸収は、矯正を受けた多くの人に起こり得ます。しかし、矯正治療中には、歯にかかる力を適切にコントロールすることによって、歯の寿命や咬む力に影響を及ぼすほどの重度な吸収を避け、リスクを大幅に抑えることが可能です。
参考サイト:岡山大学病院 矯正歯科 リスクについて
2. なぜ歯の根が短くなるのか?「歯根吸収」のメカニズム

2-1骨の「破壊」と「新生」を利用して歯を動かすのが矯正治療
まず、矯正で歯が動く仕組みを簡単に説明します。
歯は「歯根膜(しこんまく)」という薄い組織を介してあごの骨に埋まっています。
矯正装置で継続的な力をかけると、歯根膜を通じて骨に刺激が伝わり、力がかかる側の骨が少しずつ溶け、引っ張られる側に新しい骨が作られます。これを骨の「リモデリング」といいます。
このような生体反応を利用して、歯を少しずつ移動させていくのが矯正治療です。
2-2骨だけでなく歯根の一部も吸収されることがある
問題は、この過程で骨だけでなく「歯の根の一部も同様に吸収されてしまう」ケースがあること。
歯根の先端(根尖)付近の細胞が、過剰な力やストレスを受けることで破骨細胞に刺激を与え、根の先端が少しずつ短くなることがあります。これが、歯根吸収が引き起こされる原因です。
健康な状態の歯根の長さは平均13〜17mm程度ですが、数ミリ程度の吸収であれば歯の寿命や機能面において、実際的な問題は生じないことがほとんどです。
3. 歯根吸収のリスクを高めてしまう3つの要因とは?
歯根吸収の起こり方は人によって差があります。以下の3つの要因がある場合、リスクが高まるとされています。
3-1過度な力
矯正治療では弱い力を使って動かすことが基本です。仮に早く歯を動かそうとして、歯に対して過剰な力をかけてしまうと、歯根膜や根尖部の組織にダメージを与え、歯根吸収を進める原因となります。
関連記事:マウスピース矯正って本当に効果があるの?
3-2歯の形や過去の外傷
根の形がもともと先細り、短い、といった場合、歯根吸収が起きやすい傾向があります。また、過去に歯を強くぶつけたことがある場合、その歯の根は組織が繊細になりやすく、矯正力の影響を受けやすいとされています。
そのため、過去に歯をぶつけた既往がある場合には、治療前のカウンセリング時に担当医に伝えておくことが大事です。
3-3長すぎる治療期間
矯正の力が歯にかかり続ける期間が長いほど、歯根吸収のリスクもそれだけ高くなります。そのため、治療計画が曖昧なまま長期化したり、「無駄な動き」が繰り返されたりする治療は注意が必要です。
つまり、最短距離で目標に到達する計画を立てることが、歯根吸収リスクを減らすことに直結します。
4. 「適切な力」のコントロールをするための取り組み

歯根吸収のリスクを最小化するためには、次のような取り組みが効果的です。
4-1デジタルシミュレーションの活用
マウスピース矯正のインビザラインでは、治療開始前に歯のスキャンで得られた3Dデータを用いて矯正中の歯の移動シミュレーションを行うことが可能です。
これにより、それぞれの歯にかかる負荷を事前に計算し、最短距離・最小の力で目標の位置に動かせる治療計画を立案します。
行き当たりばったりの治療ではなく、最初からゴールを見据えた設計が歯根への負担を減らすことにもつながります。
4-2弱い力を持続させる最新ワイヤー・マウスピース
近年使用されているニッケルチタン合金ワイヤーや最新世代のマウスピース型装置は、歯に力をかけ過ぎず、弱くて持続的な力が発揮されるよう設計されており、リスクを減らすことができます。
4-3定期的なレントゲン確認による安全管理
矯正治療中は、定期的にレントゲン撮影を行って歯根の状態をチェックします。
その際、吸収の兆候が見られた場合は、力を弱める、もしくは休止期間を設けるなど、治療プランを柔軟に微調整します。
関連記事:インビザラインの副作用とリスク、事前に知っておきたいこと
5. 万が一、歯根吸収が起きた場合の対処法
歯に適切な力をかけて治療を行っている場合でも、ごくわずかな歯根吸収が生じるケースはどうしてもあります。
では、実際に吸収が起きた場合はどうなるのでしょうか。
5-1 1〜3mm程度の軽微な吸収の場合
ほとんどの場合はこのようなケースに当たります。
この程度の場合、歯の機能や咬む力、歯の寿命に大きな支障をきたすことはありません。歯の周囲組織が健康に保たれていれば、根が少し短くなっても歯はしっかりあごの骨に支えられます。
5-2 4〜5mm以上の重度な吸収が起きた場合
この程度の吸収が起こることは稀ですが、もし発見された場合、発見次第、次のような対応を取ります。
- 矯正力を弱める:装置を調整して歯にかかる力を最小限にする
- 休止期間を設ける:一定期間、積極的な歯の移動を停止して根の回復を待つ
- 治療計画を見直す:移動量や方向を再検討し、根への負担を減らす方向に修正する
6. まとめ:安全な矯正治療のために「カウンセリング」で聞くべきこと
矯正治療を安全に受けるためにはどのような基準で歯科医院を選んだらいいのだろう?そう思われる方も多いでしょう。
矯正治療を受けるためには、十分なリスク管理を行っている歯科医院を選ぶ必要があります。そのためには、カウンセリング時に次のような点を確認してみるとよいでしょう。
- 定期的なレントゲン撮影で歯根の状態を確認しているか
- 治療前にデジタルシミュレーションなど詳細な検査を行っているか
- 歯根吸収などリスクについて丁寧な説明があるか
- 問題が起きた際の対処法を具体的に説明できるか
歯根吸収は、適切な管理によってリスクを最小限に抑えることが可能です。一生使い続ける大切な歯だからこそ、「安い」「早い」治療を売りにしている歯科医院ではなく、専門的な知識と経験を持つ医師のもとで、安全を優先した治療を受けるようにしましょう。
参考サイト:日本矯正歯科学会
この記事の監修者
こちらの記事もおすすめ!




