子どもの歯並び① 上顎前突(出っ歯)の治療法は?

子どもの歯並び① 上顎前突(出っ歯)の治療法は?
出っ歯は日本人に多い不正咬合のひとつで、専門用語では上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれます。「出っ歯」とひとくちに言っても、さまざまなケースがありますので、それがチャームポイントになっている場合もあれば、口が閉められずに健康面や見た目に問題が出てしまう場合も少なくありません。

 

出っ歯は、子どものうちに矯正歯科での治療を開始することで、より簡単に、そしてより根本的な治療が可能です。今回は、子どもの出っ歯の治療法についてご紹介していきます。

 

1.子どもの上顎前突(出っ歯)

 

1-1 出っ歯(上顎前突)のタイプ

 

出っ歯(上顎前突)は、大きく分けて次のような2つのタイプに分けられます。

 

◆歯だけが前に出ているタイプ(歯槽性上顎前突)

骨格に異常はなく、上の前歯だけが前方に突き出ているタイプの出っ歯です。口から歯が出てしまうことが多いため、歯茎が乾きやすく、将来的に歯周病になりやすい、前歯をぶつけやすい、といったことが起こりやすくなります。

 

◆骨格から前に出ているタイプ(骨格性上顎前突)

骨格的に、上の顎の大きさが下の顎の大きさよりも大きいために、上の歯が前に出てしまっているケースです。実際、日本人の場合、上顎の骨が前突してしまっているというよりは、下顎に問題があることによって(下顎の成長が不十分、下顎が後ろに下がっている)上の顎と歯が出ているように見える、というケースが多く、全体の8割を占めていると言われています。

 

1-2子どもの上顎前突(出っ歯)を放置することによって起こるデメリット

 

◆見た目がコンプレックスになりやすい

出っ歯は見た目がわかりやすく、からかいの対象になることもあることから、心理的なコンプレックスを抱えやすい歯並びの一つです。

 

◆前歯をぶつけやすい

前歯が前方に突出しているため、転倒の際やスポーツの最中にぶつけて折れてしまうリスクが高くなります。また、外傷を受けた歯は、歯と骨が癒着してしまいやすく、そうなると矯正治療で歯を動かすことができなくなる、という可能性も出てきます。

 

◆歯周病や虫歯のリスクが高くなる

出っ歯は口が開いたままになりやすく、また、睡眠中にも前歯と歯茎が露出し、お口の中が乾いた状態になりがちです。口が乾いていると唾液による自浄作用、抗菌作用、免疫作用、再石灰化作用など、大事な働きが行われにくくなるため、虫歯や歯周病のリスクが大きく高まります。

 

◆顎関節症になりやすい

上下の顎のバランスが悪いため、顎関節の周囲の痛み、口の開きにくさ、関節の雑音の症状を起こす「顎関節症」のリスクが高くなります。また、そこから頭痛や肩こり、耳鳴りなどといった症状にも進展することがあります。

 

◆睡眠時無呼吸症の原因になる

下顎骨が小さく後退していると、睡眠時に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症」を起こしやすくなります。睡眠時無呼吸症というのは、仰向けで眠っている際、舌が喉の方向に沈み込むことによって気道が狭くなることで起こります。睡眠時無呼吸症は、日中の眠気、慢性疲労などを起こすだけでなく、心臓病、糖尿病、脳梗塞、肥満など様々な病気を引き起こしやすくなると言われています。

 

上記の他にも、前歯でものが噛めない、発音に影響が出ることがある、下唇が傷つきやすい、口臭がひどくなる、といった症状も起こりやすくなります。

 

2.子どもの上顎前突(出っ歯)の治療方法

2.子どもの上顎前突(出っ歯)の治療方法

 

子どもの出っ歯の矯正治療は、歯並びを悪くするようなお口周辺の悪い癖を取り除きながら、主に取り外しができる装置を使って歯並びや顎の位置を正常な方向へ導いていきます。

 

2-1 子供の出っ歯にはどんな装置を使う?

 

ケースバイケースではありますが、一般的には、家にいる間や就寝中のみ装着するタイプ、もしくは、1日中つけるタイプのものでも、歯並びの内側に装着する目立たないものを使用しますので、お子さんも負担やコンプレックスを感じることなく治療を進めていくことができます。

 

装置として主に使用されるものは、マウスピースタイプのもの、床矯正装置、ヘッドギアなどで、症例に応じて使い分けます。

 

子どもの時期は、骨がやわらく、歯がスムーズに動きやすいのと、顎の骨も成長発育段階にありますので、顎の大きさも調整可能で、スペースを確保するための抜歯も不要になることが多いというメリットがあります。また、簡単な装置で治療が可能ですので、成長発育が盛んな子どもの時期というのは、矯正治療に適した時期だと言えます。

 

2-2 子どもの出っ歯はいつから治療を開始する?

 

子どもの出っ歯の矯正治療は6〜7歳くらいから可能です。治療は乳歯から永久歯の生え変わりが終わる頃まで続けていきます。

 

2-3子どもの頃に出っ歯の改善をしなかった場合、どうなる?

 

子どもの段階での出っ歯の矯正治療(小児矯正)を行わず、成長が終わった後から矯正治療をする場合、歯をきちんと並べるスペースを確保するために何本か抜歯を余儀なくされる可能性が高くなります。また、顎の骨の大きさに問題がある場合には、顎の骨を削る手術が必要になることもあります。

 

2-4 子どもの出っ歯は自然に治る?

 

子どもの出っ歯は、通常自然に任せて治ることはありません。むしろ、成長するにつれて悪化していくことが多いので、出っ歯の疑いがある場合には、できるだけ早めの治療をおすすめします。

 

3.子どもの上顎前突(出っ歯)の原因

3.子どもの上顎前突(出っ歯)の原因

 

子どもが出っ歯になってしまう原因としては、次のようなことが考えられます。

 

3-1遺伝的な原因

 

■骨格の遺伝

出っ歯になりやすい「上顎が大きい」「下顎が小さい」というような骨格は、ある程度遺伝が関係しています。

 

■歯の大きさ、形の遺伝

歯の大きさや形というのは個人によって違いますが、これも遺伝が関係しています。歯がもともと大きい場合には、歯並びに収まりにくくなって前に出てしまいやすくなります。

 

3-2後天的な原因

 

■3歳以降のおしゃぶりの使用

おしゃぶりを3歳以降になっても使い続けている場合、上顎の骨の成長発育に影響がおよび、出っ歯になりやすくなります。

 

■口周辺の癖

指しゃぶりや爪を噛む癖、唇を噛む癖、舌で歯を押す癖、頬杖など、歯や骨に力をかけるような癖が出っ歯を招いてしまうこともよくあります。

 

■口呼吸

口呼吸をしていると、口がぽかんと開いたままになります。そうすると、本来上下の唇を閉めている時に唇から押されているはずの前歯に外側からの力が加わらなくなるため、出っ歯になりやすくなります。

 

また、口呼吸をしていると、口で呼吸がしやすいように体が順応していく結果、歯が出っ歯になり、下顎が引っ込んだ状態になりやすくなります。

 

最近、マスク常用の影響も加わり、口呼吸の子どもが増えている傾向があり、それに伴う歯並び、骨格の成長への影響が懸念されています。

 

4. まとめ

 

子どもの出っ歯は、割と多く見られるものですが、遺伝によるものだけでなく、普段何気なく行っている癖や、おしゃぶりの長期使用といったことが原因になっているケースも多くあります。

 

出っ歯の場合、子どものうちに原因を突き止め、早めに悪い癖を直したり、小児矯正を行ったりすることで、簡単な治療法で、かつ根本的に治すことが可能です。大人になってからではきれいに歯を並べるために抜歯をしなければならなくなったり、場合によっては顎の骨の手術が必要になることもありますので、できるだけ子どものうちに治療しておくことをおすすめします。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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