子どもの床矯正をすすめられたけど実際どうなの?メリットデメリットは?

子どもの床矯正をすすめられたけど実際どうなの?メリットデメリットは?
幼稚園や小学生のお子さんをお持ちの方で、矯正歯科でお子さんに対して床矯正(しょうきょうせい)をすすめられた方もいらっしゃるかもしれません。床矯正とは、小児矯正で行われる治療法の一種で、乳歯から永久歯への生え変わりが終わるまでの期間に行われますが、ワイヤー矯正に比べてなじみが薄いので、本当に必要な治療なのか疑問に思われている方もいらっしゃることでしょう。

 

今回は、子どもの矯正治療で床矯正をすすめられたけど実際どうなの?と思われている方のために、床矯正についての疑問やメリット・デメリットについてご紹介していきます。

 

1.子どもの床矯正って本当に必要?

 

1-1 床矯正とは

 

床矯正の「床」とは、入れ歯のように歯茎の部分を覆う部分のことです。床は通常、レジン(歯科用プラスチック)で作られており、そこに、装置を固定するためのワイヤーや、歯並びを広げるためのネジが埋め込まれています。床矯正装置は、ご自分で取り外しが可能です。

 

床矯正は、狭くなった歯並びを側方に拡大して、歯を並べるスペースを作ることを目的としており、歯の1本1本にブラケットとワイヤーをつけて歯並びをきれいに並べるワイヤー矯正とは目的も含め、全く違うアプローチで行う矯正方法です。

 

1-2 床矯正の治療方法・特徴

 

矯正治療というと、「歯並びをきれいに整える」というイメージがありますが、床矯正では、装置についているネジ(スクリュー)を回して広げることであごの骨(歯槽骨)を広げ、歯が十分に並ぶスペースを作っていきます。

 

これにより、永久歯が揃った時に、あごの骨に歯が十分に並び切らない、ということを予防することができ、抜歯矯正をしないで済む可能性が高くなります

 

1-3 床矯正を行う年齢

 

床矯正を行う適切な年齢は、歯の生え具合や歯並びといった歯の状態、あごの骨の成長の度合いなどによって違ってきますが、大体4〜12歳くらいの間に行われます。この時期は、成長が盛んな時期なので、効率良くあごの骨を拡大することができます。ちなみに、通常、床矯正は遅くても、糸切り歯が生えてくる前(だいたい10歳くらい)までに始めます。

 

2.床矯正はどのようなケースで必要になる?

 

2.床矯正はどのようなケースで必要になる?

 

床矯正は、あらゆる不正咬合において、効果的な手段となります。床矯正が必要となるケースと、そのおおよその開始年齢をご紹介します。

 

2-1 叢生(そうせい)

 

歯並びがガタガタに重なっている状態です。
治療開始年齢:6〜9歳くらい

2-2 出っ歯(上顎前突)

上の前歯が前方に突き出している歯並びです。
治療開始年齢:4歳〜

 

2-3 受け口(下顎前突)

下の前歯が上の前歯よりも前に出ている、噛み合わせが反対の状態です。
治療開始年齢:4歳〜

 

2-4 上下顎前突

上下の歯が共に前に突き出している状態です。唇を閉じるのが難しくなります。
治療開始年齢:4歳〜

 

2-5 開咬(かいこう)

噛み合わせた状態で、前歯に隙間が空いている状態です。前歯でものを噛み切るのが難しくなります。
治療開始年齢:4歳〜

 

2-6 交叉咬合(こうさこうごう)

部分的に噛み合わせが反対になっている噛み合わせです。
治療開始年齢:6〜9歳くらい

 

2-7 過蓋咬合(かがいこうごう)

上の歯が下の歯に深くかぶさっている状態です。下の歯がほとんど見えないこともあります。
治療開始年齢:4歳〜

 

3.子どもの床矯正のメリット・デメリット

 

3.子どもの床矯正のメリット・デメリット

 

床矯正には、どんな治療法もそうであるように、メリット・デメリットの両面があります。お子さんの床矯正治療を検討中の方は、メリットだけでなく、デメリットもしっかりと把握した上で治療を選択するようにしましょう。

 

3-1 床矯正のメリット

◆抜歯矯正を避けられる可能性がある
床矯正で歯並びの幅をしっかりと広げて、歯が並ぶスペースを作れた場合、永久歯になってから矯正治療をするとなった場合に、抜歯(通常上下左右合計4本の抜歯)をする必要がなくなります。

◆取り外し式なので生活が不便にならない
床矯正の装置は、固定式ではなく、ご自分で外すことができますので、お食事や歯磨きの際には外せて邪魔にならず、お子さんにとってストレスになりません。

◆虫歯のリスクを高めない
ワイヤー矯正の場合、歯磨きがうまくできずに虫歯リスクが高まりますが、床矯正の場合、外して磨けるのでそういったリスクもありません。

◆目立たない
ワイヤー矯正と比べて、装着していてもほとんど見えませんので、お子さんが装置のせいでコンプレックスを抱えることもありません。

◆痛みを感じにくい
床矯正は、ワイヤー矯正と違って歯の1本1本に強い力がかかりません。また、ワイヤー矯正のように歯の表面に硬い装置がたくさんつかないので、粘膜を傷つけることもありません。そのため、痛みを感じにくく、お子さんにとってストレスが少ない方法です。

◆治療費を抑えられる可能性がある
床矯正だけで歯並びがきれいに整う場合、その後、永久歯に全て生え変わってから第二期治療(成人矯正)をしなくても済む場合があります。その場合、矯正治療にかかる治療費を抑えることができます。

 

3-2 床矯正のデメリット

 

◆細かい歯並びの調整や、歯の大きな移動はできない
床矯正は、歯並びを広げ、歯が自然に適切な位置に並ぶように誘導していくものです。ワイヤー矯正とは違って、歯の1本1本に装置をつけ、細かくきれいに並べたり、大きく引っ張って移動させたりするようなことはできません。

◆自発的に装着する必要がある
取り外し式の装置ですので、固定式の装置とは違い、ご自分でしっかりと管理して毎日決められた時間装着する必要があります。また、適切なタイミングで、保護者の方にネジを回していただく必要がありますが、それがきちんとできていないと、思ったように歯が動かない、治療期間が長くかかる、装置が合わなくなって作り直すといったことが起こるリスクがあります。

◆最初の頃は発音しづらいことがある
床矯正の場合、歯科用プラスチックでできた床の部分の厚みにより、特に最初のうちは発音がしにくい、喋りにくいといったことが起こります。だいたい1週間もあれば慣れてうまく発音できるようになりますが、最初のうちは多少不便さを感じることがあるかもしれません。

◆矯正治療期間が長くかかることがある
床矯正治療を何歳から始めるか、によっても違ってきますが、床矯正治療は永久歯へ生え変わりが終わるまで続けますので、治療期間が数年に及ぶことがあります。また、歯並びをきれいに仕上げるために、その後第二期治療(成人矯正)を続ける場合、さらに治療期間が長くなります。

 

4.まとめ

 

床矯正治療なら、お子さんにとって負担の少ない、目立たない装置で痛みを少なく、無理なく歯並びを整えていくことができます。また、それだけで歯並びがきれいに整えば、その後にワイヤーなどをつけて矯正治療をする必要もなくなるので、治療費をかなり抑えることも可能です。

そして、もし仮に床矯正が終わった後に、歯並びをさらに整えるために成人矯正を行うとしても、床矯正治療によって歯が並ぶ土台がしっかりと広がっているので、矯正治療で必要のなることの多い抜歯を避けて矯正治療ができる可能性が高くなるのは、大きな意味があると言えるでしょう。

床矯正は、歯並び、噛み合わせの状態によって適切な開始時期が異なりますので、もしお子さんの歯並びに気になるところがあれば、早めに矯正歯科で相談されてみることをおすすめします。

 

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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